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第53話 突発発情3
「はぁっ……!」
「ハル……?」
突然身体を丸めたハルを、ウィリスは覗き込んだ。
が、もう遅いことがハルにはわかった。
発情の匂いが、毛穴の奥から外へと放出されてゆくのが自分でもわかる。心がざわついて、先ほどからわだかまっていた強い衝動がウィリスへと向かい、腹の中が潤んで、熱い何かで抉られたいとしか、考えられなくなる。
「この匂い……お前、突発発情か?」
突然のハルの変化に驚いたウィリスが鋭く尋ねた。
「……ん、っ」
かろうじて頷く。ダイアログが開くと同時に、ハルの身体が交合可能なようにつくり変えられてゆくかのようだ。
「待て。今先生を……」
「や……!」
腰を浮かしたウィリスの袖を、ハルの何かに縋ろうと伸ばされた手が掴んだ。
(いけない……、巻き込んでしま……っ)
反射的な行動に、後から理性が軌道修正をかけようとするが、どうしても握った手を離せない。ウィリスに触れているところから、ビリビリと快楽に近い刺激が神経を通って全身へと駆け巡ってゆく。アルファを引きつけるオメガの匂いと、アルファ独特の官能を刺激する香り。部屋に入ってきた時から放たれていたはずのそれに、抗えなくなってゆく。
「ハル……、ハル!」
「あ……」
「しっかりしろ……っ」
ハルの右手首と左肩に触れたウィリスの声が上ずって、鼓膜を通して聴くと、まるでエコーがかかったように聞こえる。触れられた手の熱から、ハルだけでなくウィリスもラット状態に次第に追い込まれつつあるのがわかる。
発情期なら、ハルだけなら、慣れているはずだった。アルファがいる中にいても、今まで抑制剤を凌駕する突発発情はなかった。触れ合いすぎたのだと思ったが、もう止めることができない。
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