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第61話 恋情4

「手を、出してみてくれ、ハル」 「?」  ウィリスはそう催促すると、ハルの右腕を捕まえ、シーツの中から出して自分の方へと引っ張った。 「何……?」  ウィリスに引き起こされて、裸の上半身が露わになったハルは、噛み跡や引っかき傷のある身体を見せるのを躊躇った。そんなハルの手首を握り、ウィリスはそっとそのままその手を、自分の心臓の上に押し当てた。 「……わかるか?」 「わかるって……何が?」  恐るおそるハルが問うと、ウィリスは少し口角を上げ、もう片方の腕でハルの肩を抱き寄せた。 「っ」 「俺に触れてみてくれ」  かすかに抵抗を返したハルを、そのままウィリスは抱きしめた。シャツ一枚の体温のわかる場所へとハルの手を重ねると、そのままハルが身を任せるようになるまで、目を閉じている。 「ウィリス……」  何が「わかる」なのか、ハルはわからなくて狼狽した。先ほどしたばかりなのに、こんな近くでアルファのフェロモンをかいだら、また発情してしまってもおかしくない。  だが、ウィリスは繰り返すだけだった。 「どうだ? わかるか?」 「な、なに……何が? わ、わか……っ」  何を言っているのか、ウィリスの言いたいことがわからない。すると、ハルが身じろぎするのを待って、ウィリスはそっと囁いた。 「お前が欲しくて、鼓動が速くなっている。同時にお前が少し怖くて、音が萎縮しているだろ。緊張しているのがわかるか?」

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