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第62話 恋情5

「ど、どうして……」 「好きだから、と言っても、お前は納得しないかもしれないが」  愛とはこういうものだ、とウィリスは言った。 「へ?」 「俺にとってはな。お前にとってどうなのかは、自分で探していくしかないものなんだ」  わかるか? と問われると、ハルは頷くより他にない気がした。 「そろそろ行くよ。よく休めよ?」 「あ、ああ。……あ、ウィリス!」  ベッドが鳴り、ウィリスが立ち上がったのをハルは思わず引き止めた。 「ん?」 「こ、このことは、できれば内密に」  本当は、ありがとうと言うつもりだったが、どうしても言葉が出てこなかった。まだ補正がかっていることに苛立ちながら、それでも打てる布石は全部打っておかねば、とハルの理性が主張している。  ウィリスはハルの気持ちをどこまで慮ったのか、静かにため息をついた。このことを盾に脅す選択肢は、ウィリスの中にはないのだ。 「ああ。……秘密がひとつ増えたな。じゃ」  ドアの鍵を開けて、外へと出てゆくそのシルエットを見ながら、ハルはひとつの事実に気づいてしまった。  この身体は、恋をしている。  ウィリスに、恋心を抱いている──。

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