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第65話 羨望と憧憬と3

「すみません。ベータがアルファと同列になんて、生意気だとわかってはいるのですが、それでもぼくは……」  ララはしばらく葛藤したあとで、真っ直ぐハルの方に向き直った。 「ハルを想う気持ちは、誰にも負けないつもりです。だから、ぼくとウィリスを差別しないで欲しいんです」 「ララ……」  ララは一息にそう吐き出すと、自分が大それたことを言ったと自覚したのだろう。俯いた。頬を真っ赤に染めて、唇を噛んでいる。  いくら鈍いハルでも、これがウィリスをめぐる自分への嫉妬であることぐらいは自覚できた。ララは、まだウィリスに未練を残しているのかもしれない。 (きついな……)  届かぬものに手を伸ばそうとするララのひたむきな心に水を差すように、刹那、ピコン、とダイアログが出る。  キスを問うダイアログが出るということは、パラメーターの値が変わっているということだ。今、ララの好感度はどうなっているのだろう。数値が見えないことを、これほどもどかしく感じたことはなかった。 (おれが選んでしたことなのに、今さら後悔するなんて……)  ララに対しては、あまり補正による圧を感じなくなっているのをハルは自覚していた。それは、ハルが、ハル・ロゼニウム・ガーディナーと同化しつつあるせいかもしれないが、いずれにせよ、率直に今の気持ちを伝えられることを意味する。 「……おれは、ウィリスのことも大事だけど、ララのことも同じように大事に思っているつもりだ。それでは答えにならないか……?」 「っいえ。すみません、変なことを言って。忘れてください……」  涙を浮かべそうなほどに動揺するララに、ハルがどうにか手を差し伸べようとした時、唐突にウィリスの横槍が入った。

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