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第68話 羨望と憧憬と6
(どこまで贅沢を望めば気が済むんだ、おれは……)
頭ではウィリスと親密になるのが、輪姦破滅フラグをへし折るのに効果的な手段だとわかっている。
だが、ハルがフラグを回避することが、本当にこの世界にとって、正しいことなのか。ひいては、ウィリスやララの運命をも捻じ曲げてまで、自分の身の安全を手に入れることが、価値のある未来なのか、疑念が生まれつつあった。
「俺が傍にいれば、お前に軽々しく手出ししようとする奴は減るはずだ。少なくとも、風紀委員と同室なのに、部屋へ押し入って、お前を襲おうとするような奴は現れないだろう。お前のためじゃない。正直に言う。俺が安心したいんだ。だから頼む。サインをしてくれ。俺のために」
ウィリスは二枚の用紙とともに、ペンをハルへと突き出した。
──ララかウィリスに、少しでもつけ入るような欠点があったら、良かったのに。
だが、オメガがアルファの本気の願いを断ることは、容易くできることじゃなかった。ましてや、恋情を抱いているウィリスからの真剣な望みを断るなど、できようはずがない。
「……わかった。きみには借りがある。サインするよ。おれも、きみにみっともない姿を見せないよう、努力する」
ハルは心の裏側で罪の意識を感じながら、震える手で、ウィリスの差し出したペンを手に取った。
「約束は守る」
サインをすると、ウィリスは書類を持って教職員棟の方へ向かい、歩いていった。
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