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第71話 視線2

 ウィリスの気持ちがララに残っているのなら、無理にララから引き離したくなかった。  ウィリスには、愛と呼べるものが何であるかを教えてもらった。それがひとつの例に過ぎなくても、ハルは少し安堵したのだ。人によって愛の形が違うなら、人によって愛を継続できない者も存在し得るのだろう。逆に、人によって、愛し続けることだって、できるかもしれないという可能性を示してくれた。それがどれほどハルを救ったか、はかり知れないことだった。  だから、何かお返しをしたかった。役どころが悪役令息だったとしても、人に親切にしてはいけない決まりはないだろうからだ。 「おれは、き、きみのことが嫌いじゃない……」  よくわからないが、大切にしたいと思った。  人に対してこういう情動を抱くのは、初めてのことだった。ララにもウィリスにも、それにトーリスにも、決して不幸にはなってほしくないし、もしハルにそれを止めることができるなら、労を惜しまないつもりだった。 「お前、そういうところだぞ、ハル」 「え?」  しばしの沈黙のあとで、ウィリスが呆れた声を出した。 「そういうことは、ホイホイ他の奴に言うべきじゃない。お前が下手に素直になると、物凄い破壊力なんだよ。そんな性格だったか? ってギャップにコロッといく奴が出たらどうするんだ」 「そ、そんなことあるわけ……」 「洗濯大会だのお茶会だのと、上級生たちを手玉にとっておいて自覚なしだから危なっかしいんだ」  忸怩たる声で言われて、思わずハルは赤面した。

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