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第75話 フレデリック・レイス・モーリジィ2

「最近大人しいと思ったら、友だちごっこに精を出してるってわけか? 俺も仲間に入れてくれよ、ハル」  ウィリスやトーリスと同じぐらい身長の大きなモーリジィは、横幅もレスラーのように隆々としていた。  ハルは食べかけのパンを咀嚼して記憶を手繰った。モーリジィとの思い出したくもない不潔な想い出が湧き上がってくる。彼には、キスを許したことがあった。初めてのキスだったが、力でかなわないことがわかった絶望的な状況で、できるものなら発情させてみろと挑発し、袖にした時のことだった。 「先輩、ここは下級生の席ですが?」  ウィリスが問うと、モーリジィは八重歯をむき出しに笑った。アルファは発情すると犬歯が鋭く出てくるが、モーリジィは常態からして牙のようだった。 「俺はハルに話をしてるんだ、ウィリス。お前にじゃなく」  モーリジィが牽制すると、ウィリスと睨み合いになった。トーリスは目で上級生の風紀委員を探している。ハルは引き攣らないように注意しながら、ウィリスの隣りで笑んでみせた。 「もちろん先輩のこと、忘れていたわけじゃありませんよ。でも、おれにかまってくれなくなったのは、先輩の方でしょ?」 「拗ねてるのか?」 「飽きて捨てられたんだと思ってましたよ。心の傷を癒していたんです」 「ふん」  虚栄心をくすぐってやると、モーリジィは軽く鼻を鳴らした。 「お前のことは、俺が満足させてやらなきゃな。細っこい餓鬼じゃ、お前の相手は務まらない」 「どうでしょうか」 「そうだろ。当たり前だ。お前みたいにアルファを手玉に取るオメガには、お仕置きができるとびきり強いアルファが必要さ」 「……そうかもしれませんね」  ハルがそう言うのを聞くと、ウィリスが立ち上がった。

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