75 / 179
第75話 フレデリック・レイス・モーリジィ2
「最近大人しいと思ったら、友だちごっこに精を出してるってわけか? 俺も仲間に入れてくれよ、ハル」
ウィリスやトーリスと同じぐらい身長の大きなモーリジィは、横幅もレスラーのように隆々としていた。
ハルは食べかけのパンを咀嚼して記憶を手繰った。モーリジィとの思い出したくもない不潔な想い出が湧き上がってくる。彼には、キスを許したことがあった。初めてのキスだったが、力でかなわないことがわかった絶望的な状況で、できるものなら発情させてみろと挑発し、袖にした時のことだった。
「先輩、ここは下級生の席ですが?」
ウィリスが問うと、モーリジィは八重歯をむき出しに笑った。アルファは発情すると犬歯が鋭く出てくるが、モーリジィは常態からして牙のようだった。
「俺はハルに話をしてるんだ、ウィリス。お前にじゃなく」
モーリジィが牽制すると、ウィリスと睨み合いになった。トーリスは目で上級生の風紀委員を探している。ハルは引き攣らないように注意しながら、ウィリスの隣りで笑んでみせた。
「もちろん先輩のこと、忘れていたわけじゃありませんよ。でも、おれにかまってくれなくなったのは、先輩の方でしょ?」
「拗ねてるのか?」
「飽きて捨てられたんだと思ってましたよ。心の傷を癒していたんです」
「ふん」
虚栄心をくすぐってやると、モーリジィは軽く鼻を鳴らした。
「お前のことは、俺が満足させてやらなきゃな。細っこい餓鬼じゃ、お前の相手は務まらない」
「どうでしょうか」
「そうだろ。当たり前だ。お前みたいにアルファを手玉に取るオメガには、お仕置きができるとびきり強いアルファが必要さ」
「……そうかもしれませんね」
ハルがそう言うのを聞くと、ウィリスが立ち上がった。
ともだちにシェアしよう!