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第76話 フレデリック・レイス・モーリジィ3

「いくぞ、ハル」  冷却材でも吐くように吐き捨てて、ウィリスが席を立つ。ハルもそれに倣った。正直、ウィリスが隣りにいてくれてよかった、と心底思っていた。 「ごきげんよう、モーリジィ先輩」 「つがい申請っつったって仮なんだろ? 歯型も付いてないようだしな。真に強いアルファを決める時は、いつでも俺が相手になってやるって仮の奴に言っておけよ、ハル」  ニヤニヤと笑いながら、背を向けたハルとウィリス、トーリスやララに向かって、モーリジィは気焔を吐いた。  鳥肌が立ちそうだった。立ち上がって愛想笑いができたのは、ウィリスたちが傍にいたからだ。何事も起きずに済んだことに胸をなでおろしたのはハルだけではなかったようで、食堂を出たところで、ハルを囲む三人の空気が緩んだ。  申し訳ない気持ちになったハルの視界に、ピコン、と遅れてダイアログが開く。震える手でモーリジィのそれを拒絶したハルは、あの絶対的な存在感を持つ凶悪なモーリジィが、最後の攻略対象になったことを確認した。  胃の中のものを戻さないように苦労するしながら食堂を出て、一度各自の部屋に戻り、再び午後の授業の前に集合することになった。  ハルたち一向は、二手にばらけて部屋に帰ったが、ドアを閉めたところでウィリスが不機嫌に呟いた。 「お前、どういうつもりだ?」 「どうって……?」  努めて冷静になる努力をしないと、膝から崩れ落ちそうだったハルは、ウィリスに内心の動揺を悟られたくなくてポーカーフェイスになった。  振り返ると、すぐそこにウィリスの顔があり、金色の眸が燃えるような色に染まっている。 「あのモーリジィって奴の言うことを真に受けるつもりか?」  責めるように言われて、怯えていることを知られたくなくて、ハルは咄嗟に顔を背けた。 「違うに決まってるだろ。でもああ言っておかないと、あの人は本当に何をしてくるかわからないから……」 「させたのか?」 「させ……何だって?」 「あいつにどこまでさせたのか、聞いている」 「っ……」  ハルはその言葉に頬が火照るのを感じた。

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