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第81話 クリケット大会1
ラインボルン学院の晩秋は、毎年クリケット大会で終わることになっている。
クリケットは一チーム十一名で行われ、攻守に分かれて獲得点数を競うゲームだ。
攻める側は、打者が木製のバットで革製のボールを打ち返し、ピッチと呼ばれる細長いエリアを走り抜けることで得点をする。守る側は、打者の背後に立てられいるウィケットと呼ばれる棒を倒すべくボールを投げ、いかに早く十名いる打者全員をアウトにするかを目指す。
試合は全員、白のユニフォームを着て行う。
ピッチと呼ばれる細長いエリアには投手と打者がいる。その外側に、同心円状に開いたフィールドがあり、その外周線をバウンダリーと呼ぶ。バウンダリーをノーバウンドでボールが飛び越えると、打者側に六点が加点される。
他にも数々の得点方法があり、ルールがなかなか複雑なのもクリケットの特徴だが、今回のハルのミッションは、ララを林の中へ入れないことだ。つまり、ノーバウンドのままボールがバウンダリーを越えて林の中まで飛んでいった時に、そのボールに一番近い場所にハルがポジションを取り、動けばいいのである。
簡単なことすぎて、逆にいささか手を抜いてしまわないか不安になるが、とりあえずハルは問題の試合がはじまる前に、ララに向かっておねだりをした。
「ララ、悪いけど、おれとポジションを代わってくれないか?」
「いいですけど……どうかしましたか?」
クリケットは素手でボールを捕らえるため、外野もそれなりの技術を要する。ノーバウンドでボールをキャッチできれば、相手の得点をゼロに抑え込むことができるので、小柄だがすばしこく足が速いララには、バウンダリー越えのボールがくるだろうと予測されるエリアが任されている。
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