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第82話 クリケット大会2

「ちょっと腹の調子が悪くてさ。できれば外野でのんびりしたいんだ。いいよな? ウィリス」 「俺はかまわない」  リーダーのウィリスは少し首を傾げたが、そう答えた。モーリジィ絡みの一件で揉めて以来、ウィリスとは少しぎこちない関係が続いている。ダイアログは相変わらず頻出するが、どれほどハルに対する好感度が下がっているのか、それとも上がっているのか、確認することができないのがもどかしかった。 「ぼくもかまいません。どうぞ、ハル」 「ありがとう、助かるよ」 「お大事に」  対戦チームの打者たちが、もうピッチの両側の位置についていた。ハルはララに譲られた、クリケットヤードの最後部付近まで下がり、バウンダリー越えのボールがくるのを待つ。  投手は一番手をウィリスが務める。  二球目、三球目と続き、次に投げた球を、相手選手が大きく打ち返した。青空をボールが鳥のように飛び越えてゆく。 (きた、これだ……!)  ハルがボールを追いかけて、数歩、後ろへ下がるが、球は大きな弧を描いてゆっくりと林の中へと落ちていった。特大のバウンダリー越えで一気に六点を奪われたチームは肩を落とし、ボールのゆく先を見守るしかない。  ハルはボールを取ってくる旨を片手を上げて合図して、そのまま林へと入った。

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