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第84話 クリケット大会4
「ほらよ」
モーリジィは、ハルに向かってボールをぞんざいに放ると、慌てて取り損ねたハルの二の腕を掴み、ぐい、と思い切り引き寄せた。
「わ!」
あっと思った時には、ボールを取り落としてよろけたハルは、モーリジィの筋肉質な身体に支えられ、受け止められていた。
(っまずいな……)
発情抑制剤を二倍に増やしているが、アルファと無駄に接触すれば、突発発情の機会が増すことになる。
「離してください、先輩」
「嫌だと言ったら?」
危機感に声が掠れてしまうのを、かろうじて堪えているハルに向かい、モーリジィはニタリと笑いかけ、指を鳴らした。
すると、いつの間にかハルたち二人を囲うようにして、見知った顔の三年生たちが六名、木の陰から姿を現した。
「離して欲しけりゃ、礼を尽くせ。俺たち全員に」
ギラリと笑われて、鳥肌が立つ。
ララへの暴行未遂は、モーリジィの単独犯だった。だからウィリスがひとりで対処できたのだ。
しかし、多勢に無勢でモーリジィを含め七名の上級生を相手にするとなると、たとえ誰かが助けに割り込んだところで、勝算はゼロに近かった。
「俺の機嫌が悪いのは、お前が昼寝の邪魔をしたからだ。責任取れよな」
「添い寝でもしてほしいんですか?」
「ああ。ついでにこいつらも相手してやってくれよ。どうせ毎日、アルファ相手に腰振って、しゃぶって悦んでやがるんだろ? なぁ、ハル」
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