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第87話 クリケット大会7

 ララに導かれるままその場を離れたハルは、後ろ髪を引かれながら、ともに疾走した。  ララは、誰もいない救護室までハルを連れてくると、「しばらくここにいてください。静かに。そのうちにみんなきますから、それまで大人しくしていてください」と言い残し、踵を返そうとした。 「ま、待ってくれ!」  何が何だかわからない。  だが、助けられたのは確かだった。 「ララ、あの」  事実を確認しようとララの袖を引くと、振り返ったララは何を悟ったのか、ハルの座るベッドサイドに丸椅子を持ってきて、向き合った。 「怪我はありませんか? ハル」 「あ、ああ。大丈夫だ。それより、どうして……」  小さなかすり傷こそあったが、身体はどこも無事だった。ララとウィリスとトーリスと、乱入してきてくれたチームメイトや対戦相手だった者たちのおかげだ。ハルが頷くのを見たララは、きゅっと唇を噛み締めていたが、やがて穏やかな声で話しはじめた。 「ウィリスが、あなたの様子が変なので、事前に試合をするチームに話を通しておいたみたいなんです。あなたにトーリスを付けて、何かあったら警笛を鳴らすように言って。警笛が鳴ったら、どんな場合でも試合を放棄して、あなたを助けに向かうよう、相手チームのリーダーに掛け合ってくれていたんです」 「そ、そうだったのか……」

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