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第98話 トーリス・フラン・ロイエンバーム2

 特段ハルを助けるためだったわけではない、ということだろう。トーリスは肩をすくめた。トーリスの態度はどこまでも慇懃で、そのうち出るかと読んでいたダイアログも、まだ表示されないままだ。もしかするとどこかでフラグが立ち損ねているのかもしれないが、どこに分岐点があったのか、ハルにはわからなかった。 「ところで、ハル。きみに聞きたいことがあるんだが」 「ん?」  あらたまってトーリスがハルを振り返った。 「先日きみの家で出された梅干しと昆布茶、あれは市販品なのか?」 「いや、自家製だ。どうして?」  珍しいことを尋ねてくるな、と思いながらハルが答えると、トーリスは考え込む様子を見せた。 「ウィリスが、懐かしいと言っていたんだが」 「へえ。そりゃ、珍しい感性の持ち主だな」  そういえばお茶会の時も、ウィリスはアリサの横で涼しげな顔をして紅茶に梅干しを入れていた。ハルが揶揄すると、トーリスが深刻そうに眉をしかめたので、様子がおかしいことに気づく。 「……どうした?」 「いや。きみと出逢う前に誰かからもらったことがあるのかと思ったんだが、どうも違うらしい。きみとはこの学院で知り合ったのが最初だったよな?」 「ああ。もう七年以上になるか」  小等部からあるラインボルン学院の生徒たちは、家族と過ごす時間以上に学院の生徒、とりわけルームメイトと過ごす時間が長い。ウィリスとトーリスは双子だったこともあり、ハルと仮のつがいになるまでは、互いにルームメイトだった。

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