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第103話 ララ・フランシス2
ララからの話であらたまったことなど、見当もつかない。問うと、ララはしばらく俯いたままだったが、やがて意を決した顔でハルに向き直った。
「あなたが好きです、ハル」
「え……?」
一瞬、鼓膜から脳に至るまで、空白が生まれた。ララはその時間を埋めようとでもするように、火照らせた顔でハルに訴えた。
「最初にお逢いした時から、ぼくはあなたが好きでした。ひとりっきりでいたベータのぼくを、見つけてくれて、嬉しかった。怖い人だと周りには誤解されていたけれど、あなたの優しさに、ぼくは救われたんです」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。おれは……」
突然の展開に、思わずウィリスを見る。ララがウィリスを追っていたのは、ウィリスを想ってたせいだと思っていた。
担がれているのかと一瞬思ったが、ウィリスは淡々とした表情を崩さず、ララを見ていた。
「おれは、きみを、い、虐めようと……」
転入早々、ララを事件に巻き込んで嫌がらせをしたのはハルだ。洗濯大会やその後のお茶会への誘いは、フラグ回避への伏線であり、やらせ行為に近い。
ララにはその事実を知らせていなかった、と思い口を開こうとしたハルの手を、しかしララは躊躇わず握った。
「知っています。でもお願いです。最後まで聞いてください」
「ララ……」
知っているということは、ウィリスかトーリスが話したのだろう。
だが、それにも負けない強い想いをララが抱いていることは、その手の熱から感じることができた。
「あなたの心遣いに、ぼくはすごく惹かれました。この気持ちが何なのか、ずっと不思議に思っていたけれど、ウィリスと仮とはいえつがい申請を出した時に気づいたんです。恋、なのだと」
「……」
「本当は言うべきでない、適切でない、あなたを傷つけるかもしれない、そう思ってきましたが、やっぱりベータだからといって、想いを諦められない。せっかく知り合ったのに。だから」
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