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第105話 ララ・フランシス4

 ララの澄んだ黒曜石のような眸に、ハルは気圧されて黙った。ララの想いに今ここで応じたところで、ララを傷つけるに決まっていると、ハルは自覚していた。  ハルの身体は心とともに、ウィリスに向かっている。そんな状態でララに乗り換えたところで、上手くいくはずがないのは明白だった。 「ララ……」  ハルが口を開こうとすると、それを制するようにララが言った。 「ぼくに資格がないことはわかっています。でも、ハルをこのまま自分がベータであることを理由に諦めたら、あなたにもらった気持ちを踏みにじることになりそうで」  でも、とララは、喉を震わせた。 「……ぼくじゃないんですね。わかってました。あなたを傷つけるつもりはなかったのに、そんな顔されたら、引くしかないじゃありませんか」 「え……?」 「自覚がないんだから、もうしょうがないな。ハルは」  クシャッと泣き笑いすると、ララは唇を噛んで俯いた。泣いているようだと思ったハルがララへと近づくと、敢然とした表情で、ララはハルと目を合わせてみせた。 「いいんです。どうか、傷つかないで」 「ララ……、っおれは」 「いいんです」 「っ……っ」  ここまで想ってくれる人がいるのに、ハルは結局、転生前と同じ自己中心的な理由で揺れた自分が許せなかった。ララが歩むべきトゥルーエンドを壊したのはハルだ。おまけにウィリスの真心まで疑って、自分に有利な状況を、どうにかつくり出せないか、考えていた。 「聞いてくれ、ララ」  利用しようとしたのは、ハルの方だ。  ララはいつでも真心で接してくれていたのに、その価値に気づかず、踏みにじったのはハルの方だった。

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