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第109話 ララ・フランシス8

(好きだ、きみが、好き……)  溢れ出してしまう。  ずっと蓋をしているつもりだったのに。 「どう、しよう……っ、おれ──……」  振り返らないウィリスの斜め後ろで、ハルは途方に暮れた。ララを傷つけてしまった。それでも大切な友だちだと、ララは言ってくれたのに。いつもハルだけが、蚊帳の外にいるみたいで、気づくとハルばかりが守られている気がした。 「ララを、好きにな、なりたかっ……」  すると、不意にウィリスが歩みを止めた。  振り返り、ハルの髪を一房、指で梳いてみせる。 「好きだろ? 友だちとして」 「でも……っ」  もっと、強くなれたら。努力を惜しまずたゆまぬ歩みを重ねられたら、ララを泣かせることのない、立派な人間になれたかもしれなかった。  たとえば立てなくなった時、せめて寄りかかれるようにともにいて、杖の代わりぐらいにはなれないだろうか。 「ララは十分だと言ったんだろ? お前が無駄に傷つくことはない。それこそ、勇気を振り絞ったララが可哀想だ」  穏やかで冷静な声が、そっとハルの心に着地する。慰めてくれているのだ。それに気づくと、ハルはぼろぼろ涙が落ちるのを止められなくなった。 「う……」  ウィリスの肩に顔を埋めるようにして踏み出すと、後頭部をクシャクシャにされながら、部屋へとたどり着く。  ともにいてくれたのがウィリスで良かった、とハルは思った。  きっとひとりだったら、耐えられなかった。

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