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第113話 ウィリス・フラン・ロイエンバーム4

「そ、そうだったのか……」  どうりでトーリスと目が合っても、いくら話をしてもダイアログが出ないわけだ。 「トーリスは、ララを愛しているのかな?」 「どうだろうな? おそらく、そうだろうと俺は思っているが。ララとトーリスが落ち着くまでは、もう少しかかるだろうが、兄弟として、上手くいくといいとは思ってるよ」 「そっか……」  トーリスの本音をやっと知れた。  波立っていた心が静まってきた気がしたハルが、少し口角を上げると、ウィリスが「安心したか?」と問うた。 「ん。何だか複雑で、まだよく飲み込めないけど、納得はできた、かな」 「なら良かった。お前、見かけによらず繊細なんだな。驚いたぞ」 「な、なんだよ、見かけによらずって……」  顔を上げた刹那、今度はぐいと頤を持ち上げられた。あ、と思った時には、唇が重なっていた。 「ん……っ」  なぜだか胸がきゅっとなって、一度は引っ込んだ涙がまた出てきてしまう。  ウィリスは「泣いていいぞ」と唇を接着させながら甘く囁いた。そのまま歯列を割られ、頭を傾けられて、熱い舌が挿入ってくる。 「ふ、はぁ……っ、ん……ん、っ」  舌が舌先に触れると、それだけで脳裏を白い光が弾けて消えてゆく。好きだという気持ちが溢れて、少しも我慢できなくなった。  ウィリスが転生者かもしれないだとか。  ウィリスがハルを籠絡しようとしているだとか。  そんなことはどうでもいいと思うほど、ハルはウィリスのことを好きになっていることに気づいた。

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