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第116話 ウィリス・フラン・ロイエンバーム7
「全部相手がお前だからだと気づいたのは、間抜けにも、ララの気持ちを聞いてる時だったがな」
「っ……」
幸せだ、と思った。
ウィリスが隣りにいてくれるだけで、世界がこんなにも鮮やかに見える。
「ウィリス……あの」
「そういう顔をするなって、さっきも言ったんだがな」
どんな顔をしているのか、ハル自身にはわからない。物欲しそうな顔をしていても、好きという感情が出すぎていても、ウィリスの金色の眸を覗き込むことでしか、自分を確認できない。
「俺が噛むわけがないと、タカをくくっているのか? だとしても、もうお前を誰にも渡す気はないぞ。わかってるのか?」
「うん……」
初めて出逢えた。
うなじを捧げられる人。
「いいよ、ウィリスがしたいなら、しても」
「馬鹿言うな」
「でも」
ハルは何も持っていない。ひとつも良いと思えるようなものも、武器も、何もない丸腰だった。
だったらうなじぐらい、惚れた相手に差し出したい。だから「いいよ」と言った。
なのに、ウィリスは呻くと、そんなハルから顔を逸らした。
「あ、あの……」
「そういう顔をするな」
「でもおれ、どんな顔してるのかわからないし、これがおれだから……、だから、愚かでも嫌いにならないでくれ」
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