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第117話 ウィリス・フラン・ロイエンバーム8
「馬鹿」
叱るようにウィリスが再び呻いた。それで、やっとハルは、彼が衝動をやり過ごそうとしていることに気づいた。
「……惚れた弱みだ。お前が無事に卒業して、俺を選んでくれるまで、手は出さないでいてやる。だから、他の奴にうなじを噛ませるなよ」
「──わかった」
「きっとだぞ。くそ、勃起してきた」
言うと、ウィリスはハルから離れ、ドアを開けて部屋を出ていった。きっとトイレにでもいったのだろうとハルは推測したが、首の後ろを確認すると、ウィリスの爪が傷つけた痕がわずかに残っているのがわかった。
──まるで約束みたいだ。
ハルはわずかに疼くそれを指の腹でなぞりながら、ウィリスの帰りを待つことにした。
目を閉じると、おもむろに金の縁取りのある、特別なダイアログがピコン、と開く音がした。
【神の試練3:モーリジィを『放課後お茶会クラブ』に誘う】
(──やはり、きたか……)
ハルは瞼を開け、ダイアログが点滅を繰り返すのを、ただ静かに見ていた──。
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