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第128話 『放課後お茶会クラブ』5

「少し考えればわかることですよ。先輩が前もってカップに細工をしたことぐらい。そうでしょ? パリス先生」  ハルが話を振ると、パリスは眠そうな声を出した。 「どうだったかなあ……」  その言葉をモーリジィは鼻で笑い、「どこに証拠が」と嘲った。ハルは努めて冷静を装い、話を進める。 「パリス先生が思い出せるように、ここへくる前から時を遡って話しましょうか。モーリジィ先輩に頼まれて、パリス先生は『放課後お茶会クラブ』で使用されるティーセットを先輩に見せたはずです。先輩はカップの内側に密かに痺れ薬を塗ったあとで、素知らぬ顔でパリス先生にティーセットを返却した。モーリジィ先輩はマイカップを持ってきていますし、パリス先生は神経質な綺麗好きらしく、紅茶を注ぐ前にカップの内側をハンカチで綺麗に拭っていました。だから痺れ薬が効かなかったんです」 「お前はどうなんだ」 「おれは中和剤を入れたので。さっき勧めた梅干しは、先輩の盛った痺れ薬の中和剤に浸してある特注製なんです。大方、クリケット大会の意趣返しに乱暴でもしようとしたんでしょうけれど、残念でしたね」  ハルが締めくくると、モーリジィは顔を赤くした。 「オメガにしちゃ、よくできた作り話をするな、ハル」 「お褒めに預かり光栄です、先輩。でも、もうこんなことやめにしませんか。先輩だって卒業まであと少しだ。今、問題を起こして処分されたくないでしょ? おれも潔く先輩を見送りたいです。自首しろとは言いませんが、ここは大人しく引いていただけませんか。あなたの試みは失敗した。もうララやおれに関わらないと約束いただければ、おれたち主催者側も未遂に済んだことをどうこう言いません。互いにウィン・ウィンだ。……ですよね? パリス先生?」 「うーん……」  パリスは呻き、考えるふりをした。この優男はどちらか優勢になった方に味方するつもりなのだろう。

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