130 / 179

第130話 『放課後お茶会クラブ』7

「──先輩がおれの部屋に落としていったのは、確か水色の小瓶でしたよね?」 「あ?」  その瞬間、モーリジィの顔色が変わった。 「これぐらいの。液体がまだ少し残っていたっけな。招待される前から情報が漏れていたのは、他の三年生の先輩がたの誰かから聞いたんでしょうね? もしおれがあなたを誘わなかったら、無理矢理乗り込んでくるつもりでしたか?」  ハルが喋り出すと、テーブルに置かれていたグローブのような手小刻みに震え出した。その様子に、ボディブローが確実に入ったのを確信したハルは、さらに言い募った。 「いいんですか? おれに乱暴なんかしたら、この事件があなたの仕業だとわかってしまいますが。モーリジィ先輩」 「何のことだ」 「シューボックスの隙間に仕込んだ小瓶のことですよ。あなたの指紋がばっちりついている」 「っ……のガキが! 望みどおり今から犯してやる!」  テーブルに手をついたまま、モーリジィは吠えた。ハルはいつしか自然に悪役令息風の冷笑を浮かべ、モーリジィを挑発した。 「おれに手を出したら、あの小瓶はしかるべき筋に渡るようにしてありますが? あなたが開けるはずのないシューボックスの扉と、あの小瓶についていた指紋は残らず採取して、証拠として保管してあります。小瓶の中身も分析にかけたあとで、安全な場所に隠してあります。おれがあなたに痺れ薬を渡したのなら、あの小瓶にはおれの指紋が付いていなければおかしい。重ねてシューボックスの扉に、あなたの指紋が付いているのはおかしい。違いますか、モーリジィ先輩」 「貴様……っ、殺してやる!」  ハルの「小瓶」というパワーワードは、モーリジィを激昂させるのに十分だったようだった。モーリジィは唸りを上げてテーブルの右へと回り込んだ。ハルが急いで席を立ち、右へと回り込むのを見ると、次に左へと回り込んでくる。

ともだちにシェアしよう!