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第131話 『放課後お茶会クラブ』8
「逃げるな! このっ、オメガ風情が!」
突進してきたモーリジィから逃げようと、テーブルを回り続けるハルだった。
「自首を勧めますけどね、先輩! おれが生きて口を割る可能性がある限り、あんたはこの学院から追い出される! オメガを下に見るのは勝手ですが、ガーディナー家の寄付金の額を甘く見たら、痛い目を見ますよ!」
「待ちやがれっ、ハメやがったな、クソ野郎!」
テーブルの周囲を右に左にと旋回を繰り返し、鬼ごっこを重ねるうちに、とうとうモーリジィは頭にきたらしい。上着を脱ぎ捨てると、テーブルの上に土足で上がり、まっすぐハルへと迫ってきた。
ガシャン! パリン! とティーセットが床に落ちて割れる。ハルは退路を確保しようとして、パリスが引いた椅子にぶつかった。こうなればパリスを盾にするよりないと思ったハルが、パリスの背中に逃げ込むと、モーリジィは唸り声を上げてパリスの肩越しにハルの首を掴もうとする。
「っパリス先生……!」
モーリジィに反省を促し、できれば和解したかった。鬼ごっこで逃げ切れなくとも、モーリジィが疲れてくれば、別の選択肢に気付くのではないかと思ったハルが、パリスを盾に声を張り上げる。
「おれやララを見逃してくれるなら、あの水色の小瓶と証拠を破棄してもいいですよ、先輩! あんたは無事に学院を卒業できるし、おれたちは無事に進級できる! 交換条件としては悪くないのでは……!」
椅子から立ち上がったパリスの周りをぐるぐる回りながら、モーリジィのスタミナ切れを狙ったが、このままでは逃げ切る前にハルがバテてしまいそうだった。好感度上げをかなり頑張ったはずなのに、モーリジィは頭に血がのぼると、冷静な判断が下せなくなる性分らしい。
かくなる上はパリスに働きかけようと、ハルは足を動かし続けながら決めた。
「先生! 先生だってそう思うでしょ! 先生の監督下でこんな事件が起きたら、あなたの信用問題になるのではっ? 先輩を説得してくださいっ! そうすれば……っ」
左右へ反復を繰り返していたハルがパリスの正面へ回り込んだ時だった。ぬっとパリスの腕が伸びてきてハルの袖を掴むと、逆に足払いをかけられる。
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