132 / 179
第132話 『放課後お茶会クラブ』9
「うわ……!」
バランスを崩したハルを抱きとめたパリスは、「きみのおかげでやっと、決められた」と不気味な笑顔を見せた。
「なっ……」
言葉を失い床に崩折れたハルを支え、抑え込むパリスと、その目前で獰猛な笑みを見せるモーリジィがいた。
「何でっ……」
急いで立ち上がろうとしたところを、モーリジィの大きな手が飛んできて、横っ面を叩かれる。
「っ……!」
バシッと凄い音がして、熱い屈辱が骨から肉へ、身体の中心から手足へと広がる。
「手間をかけさせやがって……ここで犯してやる!」
ハルは殴られたショックで一瞬だけ記憶が飛んだものの、すぐに正気に返った。まだ終わりではない。まだ方法があるはずだ。パリスが天秤のように態度を変えるなら、こちらへ転ぶ可能性だってどこかにあるはずだと言い聞かせる。
頭ではそう考えながら、ハルは衝撃を受けてもいた。あれだけ好感度を上げようとマメに接したにもかかわらず、二人ともハルの方へは靡かなかった。ここに至るまでのルートが様変わりしていたことから、結末も普遍ではないと信じていたが、違ったのだ。
(この、ゲームの結末は……)
──変わらないのではないか。
最後は辻褄を合わせるために、変わらないようにつくってあるのだとしたら、ハルの今までの努力は全て無に帰す。
(それなら、もう従った方が、ダメージが少なく済むかもしれない……)
心の中で、ぽきりと何かが折れる音がし、ハルの眸が一瞬翳った。その隙に、パリスがハルの腕を、制服の上着を絡ませて拘束する。
「先生……っ」
バッドエンドそのものだった。自分はパリスとモーリジィにこれから犯される。唯一、この事件の主犯でないことを証明できる可能性だけは残るが、うなじに噛み付かれたら、ショックでアルファに逆らえなくなるかもしれない。そしたら、もう本当に、ハルの人生は終わってしまう。
ともだちにシェアしよう!