140 / 179
第140話 恩寵3
(まさか……介入できる、のか……?)
『んー、んんんー?』
ハルの声に、「神」は杖に縋りながら身体をくねくねと動かし出した。まるで当たりが近いと言いたげなその動作に、ハルは食い入るように言い募った。
(できるんだな? そうだよな、あんた一応「神」だもんな……! 爺ィの一存で、ウィリスを助けることができる! そうだろ? それを言いたいんだよな、「神」!)
『まあ正解じゃ。ただし、代償としてパラメーター値が初期値に戻るがの』
(「神」……!)
『うおっ、何じゃ!』
ハルが両肩に取りすがると、「神」は枯れ木のような身体を硬直させた。
(お願いだ、助けてくれ! できるなら……できるなら、ウィリスを……! お願いします……!)
『んー、どうするかのー、体力を消耗するでのー……』
(頼む……っ! おれにできることは、もう残されていないに等しい。でも、あんたに祈ることはできる! 願うことはできる! おれはどうなってもかまわない、おれの、HPがあるなら全部あんたにやるから、だから、どうか……っ!)
ハルの熱意に気をよくした「神」は、尻の辺りを杖で掻きながら言った。
『わしが介入すると、好感度のパラメーター値が初期化するんじゃが?』
(いいっ!)
ハルが即答すると、「神」は吹き出した。
『相っ変わらずお主は即答じゃの。そういうところは変わってないのう……』
(パラメーター値なんて、また上げればいい。全部忘れられてしまったとしても、おれが覚えている。命を懸けておれを守ってくれた人には、幸せになってほしい。ウィリスを……助けてくれ、「神」……!)
『わかったわい。どれ、三度目のポーズじゃし、ひと肌脱ぐかいのう。特別サービスじゃぞい? 疲れるから本当は嫌なんじゃが……』
まんざらでもない様子で「神」は言うと、ひらりと宙から降りて、その杖でモーリジィのうなじをトン、と突ついた。
ともだちにシェアしよう!