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第143話 恩寵6

『何じゃ! 嫌な予感しかせんぞ……!』  食い気味に願い出たウィリスに、「神」は少し怯えて身を引いた。 (俺のパラメーター値を半分ハルに分けてやってくれませんか) 『はぁ?』 (頼みます、「神」様)  ウィリスが両手を顔の前で合わせ、拝むが、裾を踏まれて臍を曲げた「神」は手足をジタバタさせて駄々をこねた。 『嫌じゃ! 面倒くさい!』 (お願いします、「神」。そこを何とかしてやってくれませんか。それともまさか、できないとかですか……?) 『できるに決まっとるわい! 朝飯前じゃ! だが少しばかり分け前を与えたところで、こやつのツンは治らんぞ! それでもいいのか?』  煽られて顔を真っ赤にさせた「神」が言い放つと、ウィリスは満足げに頷いた。 (はい。気持ちの問題ですから) 『ふん! わしをいいように顎で使いおって……。ホレ、悪役令息のお主も、人の心が少しでも残っているのなら、こやつとわしに感謝するんじゃぞ!』 (え? あ……)  言った「神」はウィリスの胸を杖でトン、と叩いたあとで、ハルの胸を同じように軽く叩いた。  その刹那、ふわっと何か温かいものが胸の奥の、心のある場所だと思うところへ満ちた気がした。 (……?)  何が起きたのかわからないまま、ハルが胸の辺りを撫でる。ウィリスはそんなハルの髪を、愛しいものでも撫でるように梳き、頷いた。 (ありがとうございます、「神」。恩にきます) 『ふむ、割り切れんかった分はお主の方へ割り振ってあるからの。ま、わからんじゃろが』  豊かなヒゲを指で撫でつけた「神」は、えっへん、と胸を張ったあとで、何かを思い出したように視線を左右に移動させ、再び咳払いをした。 『おお、それとじゃ。ひとつ大事なことを忘れとった。この際だからふたりに言っておくが、今、お主ら、無限ループの中におるぞ』 (は?) (え?)  無限ループとは物騒な単語だ。ウィリスとハルが顔を見合わせると、「神」は難しい顔をした。

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