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第148話 顛末2
ウィリスとは、以前のまま仮のつがい申請を出した者同士、という理解で周囲には認識され、互いに友だちのような付き合いをしていた。
同じ部屋に四六時中いるにもかかわらず、喧嘩にならないのは、ウィリスがハルのツンを受け入れているからである。
ハルは、それに関しても謝意を伝えたかったが、如何せんまだパラメーター値が不足しているらしかった。
「ウィリス、その、あ、あ、あ、……くそ、何でもない……!」
何度目になるかわからない試みの失敗に、つい癇癪を破裂させるハルだった。
「はは。だいたい趣旨はわかっているから、無理に言葉にしようとしなくていいぞ」
「だけど、気持ちが落ち着かないんだ」
ハルが自身に苛立つのを、ウィリスは嬉しそうに容認してくれる。どうにか自暴自棄にならずに済んでいるのは、ウィリスの存在に拠るところが大きい。
「まったく、お前といると、飽きる気がしないな、ハル」
互いに二日に一度、反省文の提出が義務付けられていて、もう五日目になる。もう書くネタもなくなってきたな、とウィリスがハルの隣りへ腰掛けた。
「な、何だよ……」
目が合うと、またダイアログが開き、キスをするかどうか問われる。
「今、ダイアログ、出てるか?」
「えっ?」
ダイアログを消そうとしたハルが顔を上げると、近距離にウィリスの金色の眸があった。
途端に心臓がざわざわと騒ぎ出す。
「俺にも今、出てるんだよな、ダイアログ。面倒だから今までほぼ全消ししてきたけど、お前はどうしてる?」
「け、消してる、けど……」
「そうか」
ゲームが終わりに近づくにつれ、他のキャラのダイアログは出現頻度が落ち着いてきていたが、なぜかウィリスに関してだけは、ダイアログの数がまるで減らなかった。目を合わせるたびに出るそれに慣らされる一方、出れば出たで、自分と相手の気持ちを再確認させられるようで、心が落ち着かなくなる。
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