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第149話 顛末3
ウィリスはどうなのかな、とハルは思った。
「ハル、この出てるダイアログ、時々「はい」を選択してみないか?」
「え?」
「これからは出たら言ってくれ。お互い相談して、できれば何度かは「はい」を選んでみたい」
ぽかんとしたハルの視線の先で、ウィリスが困ったような顔をした。「はい」を選択してくれと言われた言葉の意味を吟味しはじめた途端、ハルは頬が火照るのを感じた。
「き、きみには、最初はララを守る使命があったんじゃないのか?」
「ん?」
「なのに、おれが運命を曲げてしまって……。そう思うから、「いいえ」を選んできた。だって、おれが余計なことをしなきゃ、トゥルーエンドだったかもしれないのに……」
ダイアログが出なくても、ウィリスが恋しい気持ちは募るばかりだ。ウィリスの背中の、シャツに包まれた骨ばった肩甲骨だとか、大きな前腕、細い腰、時に低く掠れる声、ため息さえも。ウィリスに気付かれないように、密かに食い入るように見入ってしまう。そうせざるをえない自分を知られるのが、恥ずかしくて怖かった。ウィリスの見ているハルが、幻影かもしれない可能性をどうしてもまだ捨てることができない。
だが、ウィリスは鋭い視線で、ぴしゃりとハルに釘を刺した。
「ハル。お前を犠牲にしたトゥルーエンドなんて願い下げだ」
「ウィリス……」
「いい加減、その相応しくないかも思想を捨てないか、ハル」
ウィリスは厳しい顔つきをした。ハルが日々葛藤を続けているのを、知っている顔だった。速攻でダイアログを消すのは、それがウィリスに対する誠意だと考えているからだというのに。
だが、ウィリスは滲んだ声で言う。
「それとも、消しているのは、俺とつがう気がないからか?」
「ちが……っ」
「俺の正体を訊いてこないのは、そのせいなんじゃないのか? 俺の正体を推測して、確信して、幻滅したからなんじゃないのか?」
「そんなわけ……!」
顔を上げると、ウィリスは思ったよりずっと苦しそうな顔をしていた。
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