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第158話 字井永一朗7
「ど、うって……、こ、困るものは、困る。きみが……す、好き、だから、困る……っ!」
言えた、と思った次の瞬間、ウィリスに抱きしめられていた。息もできないほどの強さで、背骨がしなる音がするほどきつく。
「キス、するか?」
「え……?」
「ダイアログ、出てるんだろ?」
「あ、う、ん……」
「いちにのさんで、「はい」を選ぶ。できるか?」
「う、ん……」
「いち」
「にの」
「「さんっ」」
ハルが目をつぶって「はい」を選ぶと、ピコンと音をさせてダイアログが消えた。
だけど、そこから先、いつまで経っても何も起こらない。焦れたハルが、薄眼を開いてウィリスを垣間見ると、すぐ近距離にウィリスの幸せそうに笑んだ顔があった。
「……どうやらダイアログに強制力はないみたいだな」
ウィリスの声が、美しく掠れていた。
「しないのか……?」
思わずハルが問うと、ウィリスは首を振った。
「まさか」
「じゃ、じゃあ……」
恐るおそる尋ねると、ウィリスは視線を外して頬を少し染めた。それすら美しく、かけがえのないものにハルには見える。
「今我慢をやめたら、止まらなくなる。だから必死で辛抱している」
「我慢? どうして……」
「一度お前を抱いてから、合意なしには何もしないって約束を守っているが、本当は今すぐひん剥いて、奥までねじ込んで、その綺麗な顔を、ぐしゃぐしゃにするまで泣かせてやりたい」
「なっ、お、おれは、泣いたりしない……っ」
いきなりあられもないことを言われ、赤面したハルをウィリスは愛おしそうに見た。
「どうだか」
「しないったら、しないっ」
ハルがそっぽを向くと、今度はウィリスの視線がハルを捉えた。
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