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第160話 字井永一朗9

(おれも)  ハルはウィリスの静かな告白を聞きながら、脳裏でそれを反芻していた。 (おれもウィリスと生きていきたい……) 「ウィリス・フラン・ロイエンバームと……」  思わず言葉が零れてしまい、あ、と思って目を開けると、すぐ傍に蕩けるように幸せそうな顔をした、ウィリスがいた。 「ああ、知ってる。でも、お前のことを、もっと知りたい」 「うん……いい、よ」 「……しても?」  請われて、ハルは腹の中が潤むのを感じた。切ないほどに、身が捩れるほどに、ウィリスを求める自分のことを、肯定できるのが幸せだった。 「っし、……」 「し?」 「したければ、すれば?」 (あ、もう……!)  まだデレるにはパラメーター値が足りないのか、と思ったのも束の間のことだった。 「ハル」 「な、何だよっ、別に、したくなければ……っ」  先走って求めすぎたかと思い、思わず誤魔化す言葉を吐きそうになる。  だが、ウィリスはそっとハルの言葉を、ちゃんと受け止めてくれようとしていた。 「怯えなくとも、俺はちゃんとお前のことが好きだ、ハル。魂が消えるその日まで、お前に愛を誓うことを約束する」 「ウィリス……」  人生を、ともに生きる──。  やっとそれが実感を伴って、心の深いところに落ちたきた。  ウィリスと二人でやっていく。  愛し合っていく。  想像しただけで背筋がぞわついて、うなじの毛がビリビリした。

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