「ゃ……っ、だめ、っ……」 「これで終わりにするつもりか？　俺はお前のすべてが欲しいと言ったんだが」 「だっ……て、きみを、汚したくないんだ……、きみは、誰もが羨むアルファだけど、おれは、オメガで……」 　しかも自分は規定外の転生者だ。いぎたない生き方のせいで、悪役令息にしかなれなかった。 「禊は済ませたはずだ。俺たちの間にバース性も階級も関係ない。お前が淫らなら、淫らなお前を好きだ。お前が奔放なら、奔放なお前を好きになるまでだ、ハル」 「ウィリ、ス……」 （怒ってる……？） 　まるで乱暴なところが今までないと思っていたけれど、ウィリスの言葉遣いに強いものを感じたハルは躊躇った。 「おれは、お前をただ組み敷いているだけのアルファじゃない。ともに生きたいと思っている。これを愛の行為だと思っている」 「……」 （ちがう……、ウィリスは、哀しいんだ。おれが、いつまでもめそめそしてるから。ウィリスを信じるって決めたばかりなのに、どこかでオメガである自分に対する、引け目を感じてたからだ……） 「ご、め……っ」 「アルファの力が強いのは、オメガを守るためだと俺は思う。俺が矢面に立って守るのは、お前の存在だ、ハル」 「っ」 　眩い言葉に、胸の奥に築かれてきた頑なな最後の砦が突き崩される。これが信じるということなのだと、愛することなのだと、その時、初めてハルは唐突に理解した。 「ウィリス……ッ」 　手を伸ばすと、その指にウィリスの指が絡む。迷いのない最短距離でハルを受け止めてくれる唯一の存在。もう迷うことはない、とハルはウィリスの背中に手を回しながら、きっとこれから先は大丈夫だと確信した。