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第171話 アリサ・ロゼニウム・ガーディナー1
ひりついた傷をうなじに抱えたまま、ハルは謹慎処分が解けたその週末、ウィリスと一緒にガーディナー家へ帰宅した。
ウィリスとハルが正式につがいになった、という報せは、瞬く間に学院中を席巻し、ハルの父に至っては、どこで耳に挟んできたのか、速達の手紙でハルにそのことを釈明するよう求めてきた。
ウィリスを連れて家に帰ると、父はすぐに品定めをするような視線でウィリスを凝視した。その後、父とウィリスだけで十分ほど書斎で話をすると、何事もなかったかのように解放されたウィリスとともに出てきた父は、ハルに言った。
「よくやった、と言っておこう、ハル」
父は威厳を保ったままそうハルに告げたが、それだけで十分だとハルは思った。
ウィリスによると、簡単な面接めいたことをされた、とのみ言われたが、父も、それから所用で出先から瞬く間に帰宅した母も、アルファであるウィリスを気に入ったような感触が得られたのは僥倖だったと言える。
その後、双子の妹のアリサがいるという薔薇園まで、ハルとウィリスは足を伸ばした。
温室の中で本を読んでいたアリサは、二人に気がつくと、本を閉じて立ち上がった。アルファ独特の輝くような威厳と、豊かな金髪と青銅色の眸。完璧に近い挨拶でウィリスとハルを迎えたアリサは、どこからどう見ても貴族の令嬢にしか見えなかった。
ハルが、アリサも転生前記憶を持っていることを知った経緯を話すと、この令嬢は謝罪したハルを、にっこりと完璧な笑顔で許容した。
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