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第172話 アリサ・ロゼニウム・ガーディナー2

「真冬……いや、アリサ。本当にきみにはすまないことをしたと思っている。おまけにこんなことにまで巻き込んでしまって、どう責任を取ったらいいのか……。元に戻る方法がないか、「神」に尋ねてみたが、駄目だった。おれのことを恨んでいるだろう。本当に、心から、すまなかった……」 「お兄さまにいいご友人がたくさんできて良かった。ウィリスも、いずれはわたくしの兄になる方ですもの。謝罪はもちろん受け入れますわ。薔薇園の扉を開けっ放しにして、大事な薔薇の蕾を枯らしてしまったことですよね? まったく、仕方のないお兄さまですこと」 「え? いや、おれは……」  ハルがアリサの完璧なる擬態に戸惑う表情を見せると、ウィリスがハルを制し、助け舟を出した。 「アリサ様。それでは、俺たちに何かして欲しいことはございませんか」  ハルのせいで異世界に転生したはずのアリサは、水を得た魚のように目を煌めかせ、完全なる淑女の様子で、赤い唇でねだった。 「そうですね、わたくしのお茶会に、二人で出席していただけません? そうしたら、何もかも全て、水に流します」 「それでいいのですか?」 「もちろん」  ウィリスに一歩も引けを取らず言い切ったアリサは、悪戯めいた笑みを浮かべた。アリサが自分の正体を仄めかすに留めた意志を尊重することにして、ハルはウィリスに次いで頷いた。 「わかった。きみの言うとおりにするよ。アリサ」  そうして昼食のあとで開かれた淑女のお茶会に、ハルとウィリスは特別ゲストとして招かれることになったのだった。

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