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第173話 淑女のお茶会1

「まあっ、あなたがハルさまでいらっしゃいますのね! なんて麗しい……」  小ホールにはアリサの他に、同年代の少女たちが十人ほど招かれていた。ハルがウィリスと入っていくと、最初こそ妙にざわついた空気で遠巻きにされたが、アリサがハルとウィリスを紹介すると、なぜか黄色い声が上がった。  それからは、うら若い淑女たちに囲まれて、まるで前世のアイドル扱いである。 「アリサさまからいつもお噂は聞いておりました。あの、もしよろしければ、悪役顏、やっていただけませんでしょうか……?」 「え、ええと……」  囲まれて悪役顏をせがまれている兄を、アリサはひとり奥のカウチに優雅に腰掛け、にこやかに見ている。 (これは、やれと言われているのだよな?)  ハルがニヤッと人相悪く笑うと、きゃあきゃあと冬だというのに花が咲いたように興奮した声がした。 「素敵ですわ! 次はウィリスさまとご一緒にお茶をどうぞ。あ、こちらのソファに腰掛けていただけませんこと?」 「ハル、おいで」 「ウィリス……」  ウィリスが言うのなら、多少の協力は吝かでない。というより、アリサが望むのなら、彼女の機嫌を取るためには、こうするより他にないのだろう、と思うハルだったが、ウィリスとソファに腰掛けてカップを膝の上に置いて持つと、それを見た少女たちの興奮が最高潮を迎えてしまい、内心かなり閉口した。

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