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第174話 淑女のお茶会2

「『おいで』ですって!」 「まあ、なんてお美しいのでしょう……この世の春ですわね!」 「ウィリスさまはいつもハルさまのことを呼び捨てでいらっしゃるのですか? やはりお二人の間のご信頼感の表れでいらっしゃるのでしょうか?」 「お二人でいる時は、ハルさまが向かって右側に座られることが多いのですか?」 「お二人ともお並びになると、まるで絵画のようですわ! さ、どうぞクッキーをお召し上がりになってくださいませ、ハルさま。甘いものがお好きでいらっしゃると伺っておりますが、スコーンとクッキー、どちらがお好きですか?」 「あ、ああ。ありがとう……ございます。えっと……アリサ? これはいったいどういう趣向なんだ?」  ハルがたまりかねてアリサの方を振り向くと、アリサは兄妹そっくりの悪役顏を披露して、いけしゃあしゃあと言った。 「お兄さまとウィリスのカップリングは、いっとう人気ですのよ。ご存知なかったのですね。彼女たちはわたくしの、いわば同好の士。わたくしの主催するお茶会では、毎回こうして色々な趣向を凝らして、みなさんと楽しんでおりますの」  にっこり笑んだその顔は、思う存分妄想の翼を広げられることに満足しきった一部のある種の女子のそれ、そのものだった。 「本当に素敵ですわ、アリサさま! このような貴重な機会を設けていただけるなんて……! 次はどんなお話を書かれますの? みなさん、刺激をたくさん受けましたから、きっとどんな展開でも美味しくいただけますわ!」  興奮して集ってきた淑女の群れの中心にアリサがいる。アリサは「無限にお兄さまたちから萌えの供給が受けられるなんて、この世界は天国です。幸せすぎます」とまるでどこぞのいわゆる腐女子のようなことを零している。  淑女の面々に好かれるのはかまわないが、これではまな板の上の鯉じゃないか、とハルはこっそりため息をついた。

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