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封印失敗?

 未だ壁に背をもたせたままでキースから視線をそらした魔王を見つめる。 「朝食にしましょうか。と、いっても木の実くらいしかないんですけど」  魔王は動かない。魔王の食生活など知らないが、きっと自分の食べるものと同じで大丈夫だろうと思う。なにせこれは、キースの作りだした者なのだから。 「一応、寝室と食堂は分けてあるんですよ。でも、今日はここで食べましょうか」  木の実を取りにいくのに魔王の前を通りすぎるつもりだった、が。  急に伸びてきた太い手がキースの手首を掴む。少しひねられたら骨が砕けそうな力だ。 「何、ですか」  先ほどまでそらされていた視線は、至近距離で真っ直ぐにキースをとらえ離さない。吸い込まれそうになる銀の眼に、心底感嘆する。  ――ああ、会いたかった、のか。  孤独をまぎらす相手が誰でもいいから欲しかった訳ではなく。  ――私は、これが欲しいのだ。  何故こうも魔王に固執してしまうのかなど、深く思考してはいけないと危険を知らせる本能だけが震える。それは非常に危ういことだと。欲しかったのだということだけが事実として分かれば今はそれでいい。  魔王を見つめ返して微笑むと、銀の目がすうと細められ、その薄い唇が震える。 「キース」 「何ですか。ああ、顔色が悪いですね、やはり昨晩眠れなかったせいですか」  軽口を叩くと自分のペースに戻れる気がする。偽物相手にこの体たらくならば、ますます封印は失敗していて良かったのだろう。 「しばらく寝ます?」  まだキースの右手首を掴んだままの魔王の手にそっと左手を重ねると、初めて魔王が口を開いた。 「あんな草でなど、眠れん」  それがどこか拗ねた子供を思わせて、キースは一瞬目を丸めたあとに声をあげて笑った。笑われた魔王は益々憮然としていたが、その姿が更にキースを笑わせた。  ――偽物でも案外イイかもしれないな。  ひとしきり笑い声をあげたあとでキースは微笑んだ。 「では、ベッド作りからしましょうか」

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