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魔王と料理

 もう金などいらないと思っていたのだが、それはちょっと見直しが必要かなと最近思っていて、この調子ではいよいよ必要らしい。硝子の器はいらないが、とキースは魔王を見つめる。輝く銀の長い髪に魂を吸われそうな銀の瞳、見たくてたまらなくて封印まで解いた薄青い肌。と、それにまとわりつく薄汚れた布。  ――服、いりますよねえ。  自分の衣類はいくらかあるのでそれを洗い替えて使っていたが、魔王には丈が小さいので似合わない。魔王のまとっていた装備は上衣と下衣が一つに繋がった長いコートのような服で、腰周りを銀のベルトで止めていた。黒い生地に銀の刺繍が施された服は魔王の肌によく映えて美しかったが、それを洗濯に出している間は首からかぶって紐で腰をとめる、そっけないキースの服を着ているので、申し訳ないような気分になる。それでも十分に美しいとは思う。  食事にこんなにこだわるくせに、魔王は服には無頓着で、何なら着なくてもいいなどと言いだすので、キースはそろそろ限界を感じていた。  ――やっぱり、替えはいりますっ。  これは買う以外に選択肢はない。  少なくとも、魔王の服と硝子の器代金が必要なのかと、キースはそっと溜息を吐いた。

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