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魔王とグラス
移動魔法で島に戻ると、魔王はベッドで横になっていた。
――寝ているのか。
取りあえず何もなかったことに安心しながら空になった魚籠と今日の稼ぎを見比べる。
「無人島暮らしの意味……」
いや、今はそれを考えるのは止めておこう。
とにかく、服を買うにもグラスを買うにもまだ足りない。
「キース」
「わあ!」
突然、後ろから声をかけられて飛び上がりそうになる。いつの間に起きたのか、魔王がキースの後ろに立っていた。
「なんて声を出している」
魔王は口の端を微かに持ち上げたように、見えた。
――今、笑っ……。
「硝子は買ったのか」
「え、ああ、ちょっと金貨が足りなくて」
一瞬笑ったように見えた魔王は、見慣れた表情で、すなわち眉を顰めてキースを睨み、舌を打つ。
「まだ魚を捕れというか」
「魚の他にも何か売れるものがあればいいんですけど」
「机は作らんぞ」
「もう少し小さなもの作れません? ああ、そうか作ればいいのか」
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