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魔王が看病

 目を覚ますと傍らに魔王がいる。キースと目が合うと微かな声で名を呼ばれたのが分かる。それを確認して、キースはまた意識を手放した。  それを何度か繰り返し、ようやくキースは覚醒をする。その時には魔王はいなくて、そっと身を起こすと、何故かキースは魔王の寝床で寝ていた。記憶をたどって、魔王とやりあったあとに気を失ったことを思い出した。  だとすれば、ここに寝かせたのは魔王なのだろう。  何度か目を覚ます度、見下ろしてきた魔王の目からは何も読み取れなかったが、魔王に刺された右腕には包帯が巻かれていた。  ――魔王が?  キースが無意識のままで自ら包帯を巻いたのでなければ、他に考えられない。痺れる左手に目をやると、何かの葉がびっしりと貼り付けられていて、これは確かに看病なのだろうと思った。  キースが死ねば魔王も死ぬのだから、死なれては困ると魔王が手を尽くしたのだろうが。それでも、これは天地が変わる程の驚愕だった。  ――それにしても。私もなまったものだ。  不完全だったとはいえ、炎の魔法を魔王にかわされた。魔法を使う時、魔法力の乱れは失敗を呼ぶ。そんなことは分かっているはずなのに、心が乱れてしまった。  己もまだまだ、なのだと思いつつ立ち上がろうとしたが、まだ体は熱に浮かされていて息苦しい。両手の痛みが酷く、右はなんとか動くが、左手はぴくりともしない。自ら招いてしまったこととはいえ、この状況はかなり良くない。  キースの寝床の側に、少しばかりの薬草も置いてあったのだが、魔王が荒らしたのか革袋が転がっているだけだった。  ――ああ、魔王が使ってくれたのか。  薬草を使ってくれていれば右腕の刺し傷は時間があれば治るだろう。問題は火傷の方だった。上等回復魔法であれば治るかもしれないが、キースの使える回復魔法程度では痛みを抑えることすら難しい。ないよりマシかと唱えてみたが、少し熱が引いただけだった。  それでも身を起こすことはできるようになった。

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