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魔王の事情 3

 どれくらいかの夜と朝を迎えた頃、キースはようやく元の調子を取り戻した。 「あの、色々、すみません、ありがとうございます」  食事をする机の前でキースがそっと頭を下げた。魔王が刺した右腕は、もう微かに痛みを感じるだけで動くらしいが、火傷の左手はやはり動かないらしい。試しに果実を左手の前に置いてみたが、キースは右手でそれを取り口に含んだ。  キースがもう少し弱っている時は、水と食料を口まで運んでやったことを思い出すと我ながら何をやっていたのかと思う。思い出したのか、キースが小さく笑った。 「私、鳥の雛みたいでしたね」 「ひねり潰せそうだったが」 「貴方、人間の看病までできるんですね、さすが人間界趣味」  減らず口も戻ってきた。苛々はするが、それでも死にそうなキースよりは断然こちらがいい。いつ死なれるか分からなかったから、しばらくは洞窟にこもりきりだったが、この調子ならキースは大丈夫だろう。久しぶりに外に出ると、何故かキースもついて来る。 「何だ」 「外の空気吸いたいじゃないですか。どれくらいぶりです?」 「知らん。だいたい貴様のせいだろう」 「ソウデスネ、すみません」  ふん、と鼻を鳴らして歩を進めると、やはりキースがついて来る。 「おい」 「私もこっちに用事です。水汲みたくて」  魔王の後ろをキースが歩く。様子を伺うが、前と変わった所はないように感じる。 「貴方はどこに向かっているんです?」 「川だ」 「一緒じゃないですか」  背中からキースの笑う声が聞こえる。また奇妙な生活が始まるのかと思うと辟易したが、不思議と嫌悪はなかった。  川まで出ると、少し視界が開ける。一つ向こう側の山が見えるのだが、魔王は思わずキースを振り返った。 「おい、色が違う」  山の色が以前と変わっているのだ。木々が生い茂っているから、この辺りと同じ緑だったはずが、今、目の前にあるのは所々黄色や赤に変わっている。 「ああ、この辺りは気候の変化があるらしいので、木の色が変わるんです」 「そんなことは知らん」 「貴方のいた大陸は気候の変化がなかったですからね。私もあの大陸育ちなので、詳しくはないんですが、寒くなると木の色が変わるとかそんな感じだったと思います」

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