68 / 181

魔法使い襲来

 輝く金色の髪が日の光を浴びて目がくらむ。膝の裏まである、流れるような長い髪には相変わらず目を奪われずにはいられない。細かな刺繍がこれでもかと煌めくドレスは王宮の姫かと言いたい程に豪華で、おそろしいことにこれは魔法使いにとって特別な装いではなく普段着だということだ。無駄極まりないと思うが、そんなことを言えばどんな目にあわされるか分からない。  大きな目に長い睫毛、大きめの口が彼女の華やかさを彩っているのだろうと思う。丁寧に化粧が施された顔からは、魔法使いがキースよりも随分随分年上なのだと知らせるものは欠片もない。  キースは極上の敬意をもって、魔法使いを呼んだ。 「マリー、どうして、ここに」  両親を魔王に殺されたあと、キースはこの魔法使いを頼った。父親の言う世界最高の魔法使いは、キースの厳しき師匠だ。共に魔王を討った仲間でもある。  マリーが睫毛をばさばさと瞬かせて、それから叫んだ。 「キース! 何だ、その腕は!」  思わずあとずさる程の怒声に、キースは慌てて笑みを作って見せた。マリーでなければこの腕は治せないと思っていたが、マリーにだけは見せたくなかったのだが。 「あー、少し、気を抜いてしまって」  マリーがドレスの裾を翻しキースの腕を掴む。キースと同じ程の身長だが、マリーの方が手が大きい。長い指の先、マリーの爪は薄紅色で、小さな貝殻がついていた。 「なんですか、その爪」 「可愛いだろう、弟子がやった」 「爪に貝殻……どうかしているとしか」 「お前には情緒がない。爪先まで美しくいたい女心を理解できないから、こんな所に一人でいられるんだ」  爪に貝殻を乗せる情緒など知る必要もないだろうと思ったが、これ以上は怖いので黙っておく。マリーはキースの左腕をまじまじと見つめて、鋭く睨んできた。 「お前、何をやっている? これは火山の炎だろう。こんな無人島に一人暮らしをして、それ程の炎を呼びだす必要が、何故ある」  マリーの大きな薄茶色の瞳で見つめられると、厳しく躾けられた修業時代の癖で身が引き締まるのは、きっともう一生ものだろう。誤魔化しなどきくはずがないと分かってはいたが、本当のことを言うこともできない。 「一人だと暇なので、色々と試すものです」 「腕を焼く実験をか? 阿呆か。しかもその後しばらく放っておいただろう」

ともだちにシェアしよう!