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魔法使い襲来
剣に手をかけたキースの前にマリーが手をかざす。
「マリー、今は、少し、放っておいて貰えませんか」
「できない。隠しているものを全て晒せ」
マリーのかざした手に風が集まっていく。マリーの一番得意な魔法は風を操るそれだ。マリーは本気なのだ。本気のマリーに魔法では敵わない。剣の柄に手をやって、抜く瞬間をはかる。
その時だった。
何の気まぐれなのか、洞窟から魔王が出てきたのだ。
反射的なのかマリーが手の風を魔王に放ち、避けきれなかった魔王はそのまま洞窟の壁に叩きつけられる。
「魔王!」
咄嗟に駆け寄るキースの背中に、おそろしく低い声が聞こえた。
「キース、それは何だ」
振り返るには、覚悟を決めなければならない。マリーがこの状況を見過ごすはずがない。魔王を殺すだろう。
――私は。
「キース、答えろ、それは何だ!」
マリーの怒号は凄まじかった。ここまで怒鳴りつけられたことはない。身を走る恐怖はマリーを恐れてのものか、それともこの後起きるであろうことを恐れてのものなのか、もうキースには分からなくなった。
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