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魔法使い襲来

「マリー。これは偽物だ」 「まだ言うか! お前のように孤独を恐れないやつを独りにした私の間違いだったな。お前は孤独に飲まれたんだよ、だからこんなものでも求めるんだ」 「そうじゃない。誰でも良かった訳じゃない。私は」  魔王に会いたかった。  魔王と対峙する瞬間だけが生きていることを実感できたのだと叫ぶと、マリーが目を見開く。  まだ子供の頃、自分は周りと違うのだと気付いた時から、力を押さえて生きてきた。本気で剣を振るったことなどない。際限なく蓄えられそうな魔法力を満たしたことはない。魔界の炎すら呼べそうな力を感じたことはマリーにも話したことはない。  けれど、その全てを満たしたのが、魔王だった。 「この世界で私の全てを受け止めたのは魔王しかいない」  こんなことをマリーに語るなど、思いもしなかった。けれど、長い間抱えていた裏切りをもう隠しきれそうにない。 「この先、魔王が力を持つことになれば、必ず私が殺す。それは必ずです。マリー、今は、引いて貰えませんか」  マリーは怒りを込めてキースを睨んでいる。 「お前は自分が何を言っているか分かっているのか。どうかしている、ひとを裏切る気か!」 「そうじゃない。これは偽物だ、裏切ってもいない」 「――末期だ。これを愛しているとでも言うのか」 「そうじゃない、そんなじゃない」 「だったら、何だ?」  このマリーの問いに対する答えをキースは持っていなかった。自分でも分からない。分かっているのは、まだ魔王を殺したくないと思ってしまうことだけだ。 「分からない、まだ、私は自分でも分からない」 「……お前の、そこまで必死な姿は初めてだな」  マリーが殺気を消して掲げていた手を引く。隙を狙っていた魔王がそこに切り込み、そこに割り入ってキースはその剣先を掴んだ。 「っ、何をする!」 「魔王、今は、引いてくれませんか。このままでは死にます」

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