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ワグの事情
それからは結構忙しくなった。
午前中はキース様に剣技を教えて貰い、午後からオーガご所望の小屋作りをする。それはキース様も手伝ってくれて、毎日少しずつ形になっていった。大変なのは、キース様との約束を律儀に守るオーガが暗殺のことを教えてくれることだ。教えてくれるといっても、キース様みたいに丁寧な説明がある訳じゃない。突然後ろから殴られて
「殺気を感じろ」
一言で終わったりする。しかもそれを何度も繰り返すから、オレは大工仕事をしながら常にオーガのことを気にしてなきゃいけない。
そんな毎日を繰り返しているうちに、オレはへとへとになった。キース様には情けない姿を見せたくないから気を張っていたけど、キース様が用事でどこかへ姿を消した瞬間に気が抜けて、作りかけの小屋に寝転んでしまったりする。
「ああ、つらい」
うつ伏せに転がると、作ったばかりの床は木の匂いがして落ち着く。まだ床と外枠の骨組みを組んだだけだけど、やっぱり部屋という形があるのは落ち着くもんだ。これはキース様よりオーガが正しい。
瞬間、背中に気配を感じて慌てて転がると、オーガが斧を振り上げている所だった。
「こ、怖い!」
「分かったか、これが殺気だ」
そういえば、嫌な気配を感じて勝手に体が避けたんだった。オーガはその為に斧を振り上げたのだろう。マメなヤツだ、本当に。
「はい、分かったので、休ませてください」
頭を下げると、オーガは黙ったままでオレの隣に腰を下ろす。こんな風に気を許してくれたのは、初めてかもしれない。ちょっと、嬉しい。
「魔族も家とかあんの?」
会話は続かないのが普通だが、今日は機嫌でもいいのかオーガの口が軽い。短く返してくれる。
「ある」
「こんな木の家でもいいのかよ?」
「洞窟よりましだ」
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