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嫉妬は闇落ちのしらべ
「貴方、ワグを気にいってますねえ」
「馬鹿を言うな。まあ使えるとは思うが」
「無意識で気にいってるんですよ、ワグに言われてここまで来たのでしょう? 貴方にとっては信じられないことだと思うのですが」
魔王は眉を顰めて首を傾げた。なんだか人間臭い仕草だなと思う。
「ワグを気にいってくれて嬉しいですよ」
「アレのことはどうでもいい。貴様は怒っているのか」
「そんなことないです」
言っても仕方がない。キースとて自分で説明できないような怒りなのだから。人間でもない魔王に分かる訳もない。
「俺がアレの魔法力を吸ったから怒っているのか」
「……分かってるんじゃないですか」
「アレがそう言った」
ワグの言うことなら、素直に飲みこむのだと思うと、また目の前が赤くなりそうに腹がたってくる。これ以上、魔王と話すのも嫌だった。
「ワグは私とは違うんです、二度とあんな事しないでください」
まだ肩を掴んでいた魔王の手を乱暴に振り払って背を向けると、こりない手が今度は逆の肩を掴んでくる。それも振り払うと、後ろから羽交い絞めにされた。腕を押さえつけられてそのままひねり上げられ悲鳴が上がる。
「何です、急に!」
剣の柄で魔王の腹を殴り、ようやく魔王の羽交い絞めから逃れると、魔王は憮然としてキースを見ていた。
「貴様が逃げるからだ」
「特に用事がないんでしょう?」
「キース、教えろ」
「何を」
「何故、違う。貴様とアレの何が違うんだ?」
さっきの話だろうかとキースは息を整えながら考える。魔王は自分の言いたいことだけ言うので会話にするにはこちら側が全てをくみ取ってやらないといけない。疲れる作業だが、いつもはそれも楽しんでいる。けれど、一刻も早く魔王の前から去りたいと思っている今、その作業は苦痛でしかない。早く終わらせようと、キースは言葉を選んだ。
「私は魔法力が多いんです。きっと人間ではマリーの次に多い。ワグとの違いはそれです」
ではさらば、とばかりに後ずさるが、魔王は距離を詰めてくる。
「確かめさせろ」
伸びてきた手を叩き落すと睨まれるのと同時に一気に距離を詰められる。いつの間にこんな動きができるようになったのだと息を飲む暇もなく、口を吸われた。
いつぶりだろうと思う。
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