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嫉妬は闇落ちのしらべ

 こんな風に触れるなと言ってから、魔王はそれを律儀に守っていたのか興味を失ったのか、こうして口を付けてくることはなくなっていた。 「んっ……ふ、ぅ」  遠慮なく分け入ってきた魔王の舌に咥内を浚われると勝手に体がわなないた。久しぶりの感覚が、すぐに欲を煽ってキースはびくりと跳ねあがる。こんなことはいけないと思っているのに逃げられないのは相変わらずで、それからこの行為の意味を魔王に伝えたのはきっと忘れているのだろうと思った。  膝から崩れそうで、すがるものを探した手が魔王の体にしがみつきそうになって、慌てて叱咤する。こんなことに溺れては駄目だ。魔王にとって、これは魔法力を吸い取る行為にすぎず、相手は誰でもいいのだ。自分だけがこうも煽られているなど、屈辱がすぎる。  すがるくらいなら、倒れた方がましだ。  手を引くと膝ががくんと折れた。地面に崩れる覚悟をしたキースだが、その衝撃はいつまでも訪れず、代わりに腰の周りが暖かい。  キースは魔王に抱きとめられていた。腰に回った魔王の腕は強くキースを抱きしめてくる。それに比例するように口を嬲る熱が高まった。  どうしてこうも熱いのかと思う。魔王の体温は低い。冷たいと感じるくらいなのに、こうしている時だけは熱い。だから、勘違いしそうになるのだ。  ――求められている気に、なる。  魔法力を求められているのは確かだろう。けれどそれだけでなく、まるで唯一の存在として求められている錯覚が、キースにはおそろしく快かった。  他の誰でもなく、魔王はキースを欲しがっている、そう感じられて悦びすら感じた。  だから、この腕から逃れられない。 「ん、んっ、ぁ――」  ようやく口を解放した魔王は躊躇なくキースの喉に噛みつく。ざらりとした舌の感触は、これが人間とは違うと、嫌でもキースに自覚を促してくる。  元、勇者。人間を愛し守り命をかけた日々を否定したくなんてない。

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