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魔王の事情 4

 それでもきっと、キースの本気には敵わないだろう。  まだ、時間が必要だった。  魔王は指先を見つめる。  何故、キースが泣いたのか、まるで分からないからだ。  苦しげに、けれど明らかに艶を含んでキースは魔王の行為を受け止めている。そして絶望を抱いた。  力で振り払うなど、容易いだろうに。  けれどキースはそれをしない。  そのくせ、触れれば甘く鳴いて絶望する。  ――まるで分からん。  そしてそれは、その度に動揺してしまう自分自身にも言えることだった。

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