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魔王の事情 4

 服の前を掴んで背を丸めるキースの首筋から項を何度も噛んでは舌を這わせ、少しずつ爪で掻いて服を裂いた。はらりとはだけた上服から覗く背骨に爪を這わせると、キースは大きくかぶりを振る。 「ま、って、魔王、貴方、何故、こんなこと」 「分からん。貴様が煽るのが悪い」  キースは小さく呻いてから、おもむろに魔王に向き直る。魔王の愛する黒い瞳が、甘く揺れてい る。  ――……愛? そんなはずがない。  自らの思考を叱咤してキースの顎を掴む。その手は払いのけられなかった。 「もう諦めたか」  口の端で笑うと、キースは決意を秘めたような声でそっと、言った。 「覚悟を、決めたので」 「俺に屈する覚悟か」   キースは何も答えず、代わりだといわんばかりに魔王の口に唇を合わせた。思わぬ行動に一瞬驚いたが、魔王はそのままキースの口を吸った。

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