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魔王の事情 4
キースの口から指を引きぬくと、爪をたてた場所を丁寧に舐めた。それだけでキースの体は跳ねあがる。快楽をこらえなくなった体は存外だらしない。下服の上から股間の肉を嬲ると、キースは声もなく喉をそらして跳ねた。
「いやらしい体だ。これが勇者か?」
キースは必死で顔を隠そうとするが、そんなことは許さない。顔を覆っている腕を掴んで地面に縫いつける。紅潮した頬の上には欲に煽られただらしない目がある。こんな顔もできるのかと、魔王はぞくぞくと体を震えさせた。
声を漏らすまいと唇を噛んでいるのが余計に扇情的だとは知らないのだろう。
「もっと、見せろ」
キースの両手を頭の上で一つに束ねて、もう一度下半身の肉を嬲る。邪魔な布を裂いて直に触れると、キースは噛んでいたはずの唇を僅かばかりほころばせた。
「ぁ……っ」
触れるだけでこれでは、先が思いやられる。こんな過敏な体で魔王を受け入れたら、キースは欲に堕ちるのではないかと少しばかり危惧する。そんなキースが欲しい訳ではない。
「存外、色に弱いのだな、キース。女を抱いたことがないのは本当だったか」
言葉で嬲ってみると、キースは唇を噛んで魔王を睨んでくる。欲に浮かされている瞳の奥に、今にも魔王を刺殺してしまう程の殺気を見て、魔王はにやりと笑った。
――こうでなければ。
これならば、存分に楽しめる。
握っていた肉を嬲る。声を噛んだキースの息だけが荒く響いて、魔王を煽る。キースがすぐに顔を背けてしまうのが惜しくて顔を寄せ、すぐ側で囁いてやる。
「愛らしいな、勇者」
「やめっ、そう、よぶ、な!」
こんな風にいたぶられながらそう呼ばれるのは屈辱だろうと思うからこそ、そう呼ぶのだ。つくづく勇者は色ごとに疎いのだろう。
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