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魔王の事情 4

 魔王とてそこまで好色ではなく、むしろ年中発情期である人間の方が色欲は強いだろう。人間より遥かに長寿である魔族は数十年に一度の発情期しかない。人間の女を抱いてみたのは戯れだった。  それでも、キースのことは抱き潰してみたかった。 「貴様が悪い」  耳を食んで、手の中の肉を一層嬲ると、キースはか細く鳴いて、果てた。 「――っ、!」  手の中で震える脆弱な体を、どうしても欲しいと思う。  肩で息をしながら、キースがようやく目をあけた。欲に打ち勝つ強さはまだあるようで、安堵する。 「魔王っ、もう、満足だろう」 「そんなはずあるまい。言っただろう、抱くと」 「そんなこと、私は男で」 「男でも抱ける。知らんのか?」 「知って、いる、けど」 「体の造りは、そう人間と変わらん。貴様の体内に俺を注ぐ」  キースの体が震えた。ここまでされてようやく、この先を想像でもしたのだろう。キースの中を自分で満たせるかと思えば、魔王も震えた。これ以上の快楽があるだろうか。 「む、無理」 「多少は壊すかもしれんな」 「困る、そんなことは」 「ならば、殺せ。貴様は本気になれば俺を殺せるだろう? そうしないのは、貴様がこれを望んでいるからだ」  キースがはっとしたように瞬いて、息を吐く。 「そう、でしたね。私は覚悟を決めたのでした」  思い出したような丁寧語が気にいらない。もっと理性など捨てた、さっきまでの顔が見たくて、魔王はキースをうつ伏せに組み伏せた。首の後ろを押さえて全ての布を剥ぐ。晒された白い肢体が艶めかしい。屈辱に耐えかねたキースが鋭く唸るのも欲情をそそる。 「魔王っ、こんな姿は嫌、だ!」 「いい格好だ。覚悟を決めたのだろう? 受け入れろ」  背骨を爪でなぞりたどりついた先を割る。魔王を受け入れるには明らかに小さすぎる孔に爪をたてると、キースの手に炎が集まるのが分かる。魔法を呼んでいる。 「焼かれてはたまらん」  爪を立てるのをやめると、キースが叫んだ。 「痛いのは、嫌、です」  そうは言われても痛くしないことは不可能だ。キースから手を放して腕を組み策を練るが、そのまま貫く意外の方法など、知らない。

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