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魔王の事情 4

 キースが身を起こして服をかき集めるのを横目で見ながら、魔王は小さく唸った。ここまできて抱けないなど、あってたまるものかと思う。キースとて炎を呼ぶまでは抵抗一つしなかったのだ。 「逃がさんぞ」 「分かっています」  キースは握りしめていた服の中から小瓶を取り出して、うつむく。 「これは軟膏ですが、きっと何もないよりは……」  キースは消え入りそうな声でそう言うと、小瓶の軟膏を手にとって、自らの孔に指を這わせた。 「っ」  痛みなのか眉を寄せ、目を細めるキースが酷く扇情的で耐えられなくなる。 「貸せ、俺がやる」  抱き寄せたキースの手から小瓶を奪うと、キースがしていたように軟膏を指に絡め、孔に塗りこんだ。 「ああっ」  甘く鳴いたキースが座ったままで魔王の首にすがりつき、びくびくと体を跳ねあがらせる。それをもっと見たくてゆっくりと軟膏を塗りこむ度に、キースはより強く魔王にすがりつきながら、高らかに鳴いた。 「あ、っ、いやだ、こんなのは、耐えられない」 「その割に、悦い顔をしている」 「早く、もう――」 「あまり色に狂うな、キース。それではつまらん」 「勝手なこと、っぁ、ん、をっ!」  これがあのキースか。  もう何度目かもわからない感慨に満たされながら、魔王はキースの腰を抱いて持ち上げ、自らの上に落とした。軟膏でほぐしたとはいえ、密量はどうにもならない。小さな孔を苛みながら貫くと魔王の首にすがりついているキースががくがくと震えた。 「ああ、痛っ、こんな、ことっ」 「初めてか」 「あっあっ、当然、だ――貴方でなければ、誰が、こんなことを、許すと」  キースの声が震える。  魔王はごくりと息を飲んだ。 『貴方でなければ、誰が、こんなことを、許すと』  キースの声が何度も頭を巡って、そして魔王の中の何かを壊した。  息が乱れる。浅く貫いていたものを、キースの奥深く穿って、悲鳴をあげるキースの口を塞いだ。舌を吸いながら、キースの腰を揺らすと、体を貫くような痺れが全身を走った。 「あっ、んっ」 「キース、キース!」  耳を食んで首を噛む。 「あっ、いや、まお、う」 「俺だけか、俺だけが、貴様を、こんな風に」 「そう、だと、言っている!」

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